倉庫や食品工場の防虫管理は、粘着シートに捕まった虫を人が数える作業から、画像認識やセンサーで自動的に数える方向へと変わりつつあります。ただ、各社の仕組みは、同じ「AI」「IoT」という言葉でくくられていても、実際には大きく異なります。ここでは、倉庫害虫モニタリングの比較表から6者を抜き出し、横に並べると見えてくる3つの違いを整理します。
6者の事実項目を一覧で確認する
次の表は、方式、主な対象、遠隔監視の有無、国内提供の有無を抜き出したものです。確認できなかった項目は「公式サイト参照」としています。順位や優劣を付けるものではありません。
| 提供者・サービス | 方式 | 主な対象 | 遠隔監視 | 国内提供 |
|---|---|---|---|---|
| RYODEN「Pescle」 | 動体センサ連動カメラ+AI判別(ネズミ)、捕虫器のAIカメラ(飛翔虫) | ネズミ、0.5mm以上の飛翔虫 | あり | あり |
| RIG1.0(アース環境サービス・Luci・ゴウハウス) | 捕虫器内カメラの画像をサーバのAIで判定 | ユスリカ、コバエなど | あり(Webアプリ) | あり |
| 環境機器「Pest-Vision」 | 粘着紙のスキャン画像をクラウドのAIで判定、IoTカメラ(ネズミ) | 虫25グループ+その他、ネズミ | あり | あり |
| Rentokil Initial「PestConnect」 | 赤外線センサーと無線通信 | 主にネズミ | あり | 公式サイト参照 |
| EFOS「Trapview」 | 粘着板の撮影+クラウドの画像認識 | 農業害虫 | あり | 公式サイト参照 |
| FarmSense「FlightSensor」 | 光学センサーで飛翔昆虫を識別 | 飛翔する農業害虫 | あり | 公式サイト参照 |
2026年10月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。
6者の遠隔監視は、いずれも「あり」です。この点では違いが見えにくいため、方式、対象と施設、公表情報の粒度という三つの観点から、違いを順に見ていきます。
違い1:方式は「撮影して数える」「通過を検知する」「光学で識別する」に分かれる
一つ目の違いは、虫やネズミをとらえる方式です。RIG1.0、Pest-Vision、Trapviewは、トラップに捕まった虫を撮影し、画像をクラウドに送って、AIで種類と数を判定する方式です。RIG1.0は、2019年9月に発表され、機内のカメラの画像を二種類のAIで解析すると報じられました。Pest-Visionは、ライトトラップの粘着紙をスキャンしてアップロードし、虫を25グループとその他に分類します。Trapviewは、フェロモントラップ型で、粘着板を撮影して機械学習で識別します。
これに対して、PestConnectは赤外線センサーと無線通信を使い、動物が通ったことを検知してアラートを出す方式で、24時間の監視を特徴にしています。Pescleのネズミ向けサービスも、動体センサーと連動したカメラで撮影を始め、AIがネズミかどうかを判別するため、通過の検知に近い方式です。さらに、FarmSenseのFlightSensorは、光学センサーで飛んでいる昆虫を直接識別・計数する方式で、粘着トラップを使わない点が異なります。
方式が違うと、得られるデータの性質が変わります。撮影して数える方式は、捕獲された虫の種類と数が残るため、監査用の記録に向きます。通過を検知する方式は、いつ、どこで動きがあったかが即座に分かるため、侵入の早期発見に向きます。光学で識別する方式は、粘着トラップの確認間隔(7〜10日ごと)で見落としていた飛来の時間変動をとらえられる、と提供者は説明しています。どの方式が適しているかは、守りたい対象と、必要な記録の種類で決まります。
違い2:対象と想定する施設が、ネズミ・飛翔虫・農業害虫で異なる
二つ目の違いは、主な対象と施設です。PescleとPest-Visionは、ネズミと飛翔虫の両方に対応し、食品・医薬品工場などの屋内施設を想定しています。RIG1.0は、ユスリカやコバエなど、食品への異物混入のリスクがある虫を対象に、食品工場向けに開発されました。PestConnectは、公式ページ上、主にネズミ向けのデバイスが紹介されています。
TrapviewとFarmSenseは、農業害虫を対象にしており、果樹園や畑、ナッツ類の農場が想定されています。表に農業向けの提供者を含めたのは、画像認識や光学センサーといった要素技術が共通しているためですが、倉庫や食品工場にそのまま転用できるかどうかは、各社に確認する必要があります。屋外の圃場向けの機器は、太陽光パネルやバッテリー、携帯回線で動くことを前提にしており、設置環境の条件が屋内とは異なります。
このように、同じ「害虫モニタリング」でも、守る対象と環境が違えば、必要な機能は変わります。倉庫では、貯穀害虫やネズミ、飛翔虫が問題になり、検疫との関係では、保管中の貨物に虫が入っていないことの確認が求められます。比較表の「対象」と「想定する施設」の列は、この違いを確認するための項目です。
違い3:公表情報の粒度と、国内提供の確認のしやすさ
三つ目の違いは、公表されている情報の粒度です。PescleやRIG1.0、Pest-Visionは、国内企業が日本語で情報を出しているため、方式、導入事例、対象の虫が確認しやすい状況です。Pescleは、アース環境サービスが食品・医薬品工場で導入した事例がニュースレターで紹介されています。Pest-Visionは、2025年の国際学会ICUPでネズミのオンラインモニタリングとして発表されています。
一方、PestConnect、Trapview、FarmSenseについては、国内提供の有無を確認できる日本向けの公式ページを、本サイトでは確認できていません。PestConnectは、豪州、香港、韓国などの公式ページが確認できました。海外の提供者は、地域ごとにサービスの内容や名称が異なる場合があり、日本で同じサービスが使えるとは限りません。こうした場合に表で「公式サイト参照」としているのは、確認できない情報を推測で補わないためです。
料金も、公表の粒度が分かれる項目です。サブスクリプション型で提供されるサービスが多く、料金が非公開のものが少なくありません。比較の際は、機器の購入か月額かという契約形態、データの保管期間、記録の出力形式といった項目を、提供者に直接確認するのが現実的です。
比較の際には、提供者に確認できる質問をあらかじめ整理しておくと、情報の粒度の差を埋めやすくなります。たとえば、設置の際に電源や通信回線をどう確保するのか、判定結果を人が確認して修正する仕組みがあるのか、記録をどの形式で、どれくらいの期間にわたって出力できるのか、といった点です。これらは提供者の優劣を問う質問ではなく、自社の施設の条件に合うかどうかを確かめるための質問です。
まとめ:横並びで見えるのは方式と対象の役割分担
6者を横並びにして見えるのは、優劣ではなく役割の違いです。撮影して数える方式、通過を検知する方式、光学で識別する方式は、それぞれ得意な場面が異なります。対象がネズミなのか、飛翔虫なのか、農業害虫なのかによって、選択肢も変わります。公表情報の粒度は、国内の提供者と海外の提供者で差があり、導入前に確認すべき事項が多い領域です。
検討の第一歩は、守りたい対象と環境、必要な記録の種類を整理することです。そのうえで、比較表の事実項目から絞り込み、提供者に問い合わせるという流れが、無理のない進め方です。個々の提供者のプロフィールは倉庫害虫モニタリングの比較表に、検疫との関係は検疫とくん蒸業界の全体像にまとめています。
